ゼロから始める創業術 Vol.52|在庫で資金ショート!?300万円を失った社長の失敗から学ぶ在庫管理術
こんにちは、税理士の林です。
「売上は順調なのに、なぜかお金がない」——先日、小売業を営む社長からこんな相談を受けました。話を聞いてみると、倉庫には売れない在庫が300万円分も積み上がっていたんです。これ、本当に危険な状態なんですよね。
創業後しばらくすると、売上だけでなく「在庫」の管理も事業の重要なテーマになってきます。正直に申し上げると、在庫管理を甘く見ている会社は、いつか必ず資金繰りで苦しむことになります。
今回は、小売業や製造業をはじめとした在庫を扱う業種にとって不可欠な、在庫管理の基本と「発注点」の考え方について、実際にあった失敗事例を交えてお話しさせていただきますね。
■ なぜ在庫管理が重要なのか?3つのリスク
在庫管理が不十分だと、以下のような深刻なリスクが生まれます。
リスク1:過剰在庫でキャッシュが消える
在庫は「売れるまでお金を眠らせる存在」です。過剰在庫は、キャッシュフローを悪化させる最大の原因なんですよね。
実際にあった話なんですが、ある雑貨店の社長が「安く仕入れられるから」という理由で、500万円分の商品をまとめ買いしました。でも、実際には3か月経っても100万円分しか売れず、400万円が倉庫に眠ったまま。
その間、家賃や人件費の支払いに困り、消費者金融から借りる羽目になってしまいました。「安く買えた」と思っても、売れなければ意味がないんです。
リスク2:保管コストと劣化ロス
在庫を抱えると、保管スペース、光熱費、管理の手間がかかります。さらに、時間が経てば劣化や流行遅れで売れなくなるリスクもあるんです。
ある食品卸の会社が、賞味期限の管理を怠り、80万円分の商品を廃棄することになりました。倉庫代も月20万円かかっていて、年間で240万円のコストでした。在庫は「持っているだけで損をする」こともあるんですね。
リスク3:欠品で販売機会を失う
逆に、在庫が少なすぎると欠品して、売れる時に売れない状態になります。
ある通販会社が、人気商品の在庫を切らしてしまい、2週間も品切れ状態に。その間に約200万円の売上機会を損失し、さらに顧客が競合に流れてしまいました。在庫管理は、売上に直結する重要な業務なんです。
■ 「発注点」とは?欠品を防ぐ魔法の数字
在庫管理の基本が「発注点」です。これは、「在庫が何個になったら、次の仕入れを行うか」という基準のことなんです。
発注点の計算式
発注点 = 1日の販売数 × リードタイム + 安全在庫
- リードタイム:発注してから納品されるまでの日数
- 安全在庫:不測の事態に備えた余裕の在庫
具体例:ある雑貨店の場合
ある人気商品について、以下のデータがあるとします:
- 1日の販売数:平均5個
- リードタイム:仕入れ先から納品まで3日
- 安全在庫:念のため5個確保
発注点 = 5個 × 3日 + 5個 = 20個
つまり、在庫が20個を下回ったら、次の発注を行うというルールです。これを守れば、欠品のリスクを大幅に減らせます。
発注点を設定しなかった失敗例
ある小売店が、「感覚で仕入れる」という方法を続けていました。ある時、人気商品の在庫が残り5個になったのに気づかず、発注が遅れて3日間欠品。その間に50万円の売上機会を失い、さらに常連客が競合店に流れてしまったんです。
もし発注点を20個に設定していれば、在庫が20個を下回った時点で自動的に発注し、欠品を防げたはずなんですよね。
■ 在庫管理を「仕組み化」する3つのステップ
「感覚で仕入れる」方法では、事業が大きくなるにつれてミスやロスが発生しやすくなります。在庫管理を仕組み化する3つのステップをご紹介しますね。
ステップ1:在庫リストを作る
まず、すべての商品の在庫数を一覧にします。Excelで十分です。最低限、以下の項目を記録しましょう:
- 商品名
- 現在の在庫数
- 1日の平均販売数
- 発注点
- 最終発注日
ステップ2:在庫回転率を計算する
在庫回転率は、在庫がどのくらいのスピードで売れているかを示す指標です。
在庫回転率 = 売上原価 ÷ 平均在庫額
例えば、年間の売上原価が1,200万円、平均在庫額が200万円の場合:
在庫回転率 = 1,200万円 ÷ 200万円 = 6回転
つまり、年間で6回、在庫が入れ替わっているということです。一般的に、在庫回転率は高いほど良いとされています。業種によりますが、小売業なら年6〜12回転が目安です。
ステップ3:在庫管理ツールを導入する
最初はExcelで十分ですが、商品数が増えてきたら在庫管理ソフトの導入を検討しましょう。
おすすめのツール:
- ZAICO:スマホで在庫管理、月額980円〜
- 楽楽販売:受注・在庫・発注を一元管理
- freee在庫管理:会計ソフトと連携
ある小売店が在庫管理ソフトを導入したところ、過剰在庫が30%減り、欠品も50%減少しました。月額数千円の投資で、年間数百万円のコスト削減につながったんです。
■ 在庫管理と税務の関係:知らないと損する話
在庫(棚卸資産)は、決算時の「利益」に大きく影響します。これ、意外と知らない方が多いんですよね。
期末在庫が多いと利益が増える
会計上、以下の式で利益を計算します:
売上総利益 = 売上 – (期首在庫 + 当期仕入 – 期末在庫)
つまり、期末在庫が多いほど、利益が増えるんです。
例えば、売上1,000万円、期首在庫100万円、当期仕入600万円の場合:
- 期末在庫が50万円の場合:売上総利益 = 1,000 – (100 + 600 – 50) = 350万円
- 期末在庫が100万円の場合:売上総利益 = 1,000 – (100 + 600 – 100) = 400万円
期末在庫が50万円増えると、利益も50万円増えます。利益が増えれば、税金も増えるわけです。
正確な棚卸の重要性
だからこそ、期末の棚卸(在庫の実地調査)は本当に重要なんです。
ある会社が、棚卸をいい加減にやっていて、実際の在庫より100万円多く計上していました。税務調査で指摘され、過去3年分の修正申告と追徴税額40万円を支払うことになったんです。
棚卸は、経営判断と税務判断の両面から、精度を上げる必要があります。
■ まとめ|在庫を「見える化」して強い経営へ
在庫管理は、単なる事務作業ではなく「資金」「利益」「顧客満足」すべてに関わる重要な経営課題です。
今回お話ししたポイントをまとめると:
- 過剰在庫はキャッシュを眠らせる最大の敵
- 発注点を設定して欠品を防ぐ
- 在庫管理ツールで仕組み化する
- 正確な棚卸で税務リスクを回避する
創業期からしっかりと仕組みを整えることで、無駄なく強い経営体制を築いていきましょう。あなたの事業が、在庫管理を武器に成長することを、心から応援していますよ。
在庫とキャッシュフローの関係や、経理・税務上のアドバイスについては、こちらからお気軽にどうぞ。
