ゼロから始める創業術 Vol.49|法人化で年間50万円節税!利益500万円が分岐点になる理由
こんにちは、税理士の林です。
「そろそろ法人化した方がいいですか?」——先日、個人事業主として3年目を迎える経営者の方からこんなご相談をいただきました。年間利益が550万円ほどあるそうです。この場合、正直に申し上げると、すぐに法人化した方が節税になります。
実は、「年間利益500万円」というのが、法人化を検討すべき一つの目安なんです。なぜかというと、この水準を超えると、個人事業主の税率が法人の税率を上回り始めるからなんですよね。
今回は、100社以上の法人化をサポートしてきた経験から、なぜ利益500万円が法人化の分岐点になるのか、具体的な数字を使って詳しく解説させていただきますね。
■ 年間利益500万円が目安とされる2つの理由
「500万円」という数値は、法律で決まっているわけではありません。でも、実務上の損益分岐点として、多くの税理士が目安にしている数字なんです。
理由1:税率の逆転現象が起こる
個人事業主の所得税・住民税は、累進課税です。利益が増えるほど税率が上がっていきます。一方、法人税は基本的に一定です。
具体的な税率を見てみましょう:
- 個人事業主:所得税5〜45% + 住民税10% + 事業税3〜5% = 合計18〜60%
- 法人:法人税15〜23.2% + 地方税 = 合計約23〜34%
年間利益が500万円を超えるあたりから、個人事業主の実効税率が約30%を超え、法人の税率(約23.2%)よりも高くなり始めるんです。
実例:利益600万円の場合の税額比較
年間利益600万円のケースで、個人事業主と法人を比較してみましょう:
【個人事業主の場合】
- 所得税:約60万円
- 住民税:約60万円
- 個人事業税:約15万円
- 国民健康保険:約80万円
- 合計:約215万円
【法人の場合(役員報酬300万円、法人利益300万円)】
- 法人税等:約70万円
- 所得税(役員報酬分):約10万円
- 住民税(役員報酬分):約20万円
- 社会保険料(会社+個人):約50万円
- 合計:約150万円
差額は約65万円の節税です!これが法人化のメリットなんですよね。
理由2:社会保険料負担のバランスが取れる
法人化すると、役員報酬に対して社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務になります。これは会社と個人の両方が負担するため、利益が少ないと節税効果が社会保険料で相殺されてしまうんです。
実際にあった話なんですが、年間利益300万円の個人事業主が法人化しました。でも、社会保険料の負担が予想以上に重く、法人化前より手取りが減ってしまったんです。利益が少ないうちは、個人事業主のままの方が得なケースもあるんですね。
一般的に、年間500万円程度の利益があると、法人化による節税効果が社会保険料負担を上回るとされています。
■ 法人化のメリット:節税だけじゃない5つの利点
法人化のメリットは、節税だけではありません。事業を成長させる上で重要な利点がたくさんあるんです。
メリット1:所得の分散ができる
法人なら、家族を役員や従業員にして、所得を分散できます。累進課税の税率を下げる効果があるんです。
例えば、利益800万円を社長一人で受け取ると税率30%ですが、社長400万円、配偶者400万円に分散すれば、税率は20%程度に下がります。
メリット2:経費の範囲が広がる
法人なら、役員報酬、退職金、生命保険料なども経費にできます。個人事業主では経費にできない項目が増えるんです。
メリット3:赤字の繰越期間が長い
個人事業主の赤字繰越は3年間ですが、法人なら10年間繰り越せます。
メリット4:社会的信用が上がる
法人の方が、融資、取引、採用で有利です。ある個人事業主が、大手企業との取引を打診したところ「法人でないと取引できない」と言われて、急いで法人化したケースもあります。
メリット5:事業承継がしやすい
法人なら、株式の譲渡で事業承継ができます。個人事業よりもスムーズなんです。
■ 法人化のデメリット:知っておくべき3つの負担
もちろん、法人化にはデメリットもあります。メリットだけでなく、デメリットも正しく理解しておくことが大切です。
デメリット1:設立コストがかかる
法人設立には、登録免許税、定款認証費用、司法書士報酬などで、株式会社なら約25万円、合同会社なら約10万円がかかります。
デメリット2:赤字でも法人住民税がかかる
法人は、赤字でも年間7万円程度の法人住民税(均等割)を納める必要があります。個人事業主なら、赤字なら税金ゼロです。
デメリット3:事務負担が増える
法人は、決算書の作成、法人税申告、社会保険手続きなど、事務負担が大幅に増えます。税理士への顧問料も年間30〜50万円程度必要です。
■ 法人化すべきかどうかの判断基準
「年間利益500万円」は一つの目安ですが、それだけで判断するのは危険です。以下の要素も考慮する必要があります。
判断基準1:利益の安定性
今年だけ利益500万円で、来年は200万円に下がるなら、法人化は時期尚早です。少なくとも2〜3年は安定して500万円以上の利益が見込めるかを確認しましょう。
判断基準2:今後の成長見込み
今は利益300万円でも、来年500万円、再来年800万円と成長が見込めるなら、早めに法人化するのもありです。
判断基準3:資金調達の必要性
融資を受けやすくしたい、投資を受けたいなら、利益が少なくても法人化するメリットがあります。
判断基準4:家族構成
家族を役員にして所得分散できるなら、法人化のメリットが大きくなります。
■ まとめ|利益水準と将来像で法人化を判断しよう
「年間利益500万円」は、税率と社会保険料のバランスから見た法人化の一つの分岐点です。でも、それがすべての事業者にとって正解とは限りません。
法人化を検討する際は、以下のポイントを確認しましょう:
- 年間利益が安定して500万円以上あるか
- 今後も成長が見込めるか
- 資金調達や取引で法人が必要か
- 家族への所得分散ができるか
- 事務負担増を許容できるか
私たちの事務所では、個別のシミュレーションや法人化の節税効果分析も行っています。法人化のメリット・デメリットをきちんと把握した上で、事業にとってベストな選択をしましょう。あなたの事業が、最適なタイミングで法人化し、さらに成長することを心から応援していますよ。
法人化についての具体的なご相談は、こちらからお気軽にどうぞ。
